素描

あわのような思いを記録していくところ

【読書記録】「飛田で生きる」/徳間文庫/杉坂圭介

大阪に越してきたばかりのころ、好奇心であの界隈をカメラ片手に散歩したことがある。

阪堺電車恵美須町方面のロケーションとか、まだカラオケ喫茶軍団が進出する前の通天閣の足元とか。

もうレトロでディープでちょっとだけほの暗い香りもして最高の場所だと思った。

そこに飛田新地という一角があることも自然と知ったのだけれど、もちろん足を踏み入れる勇気はなかった。

ただ、あの有名な「飛田新地料理組合」という看板だけでも見てみたいなあと呑気に思ったりしていた。

 

そんな興味津々だけど一生足を踏み入れる機会などないだろう場所、飛田新地

そこで実際に料亭を経営していた著者が、飛田という街のシステムやそこに集う人々の人間模様を経営者の目線で描いた本。

こういう特殊な世界を一歩引いた経営者目線で記録した本というのはちょっとめずらしいのではないだろうか。

閉ざさされた遊郭の街で繰り広げられる悲喜こもごも・・・というよりは、金×金×駆け引き×人間関係という感じ。

正直一瞬を切り取ったこの本だけでそこに生きる人の人生までは分からないけれど、どんな顔をして料亭の玄関に座るのか、どんな顔をして街を歩くのかは想像できる気がする。

そして女の子の世話を焼き、たくましく客を呼び込み、狡猾に図太く飛田の世界で「オバチャン」として生きるオバチャンたちの人生が気になった。

どう生きてどう年をとって、どうしてオバチャンと呼ばれる年齢になって飛田に来たのか。もしくは戻ってきたのか。

 

飛田のオバチャンを題材にした本、読みたいなぁ。

とっても濃ゆそう。